さて、岩手&盛岡の旅の後半戦。
その一.浄法寺で漆を知る
盛岡郊外で南部鉄器の工房さんを廻った後、
向かった先は岩手県二戸市浄法寺町。
以前とあるイベントで、
浄法寺漆を使った浄法寺塗の漆器で"どぶろく"と"ひっつみ汁"を頂いた際、
口当たりの柔らかさと触感に感動。
そして...
いつか浄法寺に行くぞ!と強く思っていたので、
今回東北に来ることが決まった時点から心に決めていた。
それが浄法寺、漆芸の殿堂 滴生舎。
浄法寺は今に残る数少ない国産漆の生産地。
それも国産漆の約7割を算出する日本一の産地なのだ。
この浄法寺産の漆、
京都の鹿苑寺金閣や日光東照宮等、
国宝や重要文化財の修理・修復にも使われており、
品質についても高い評価を受けている。
一方、浄法寺塗は、
奈良時代の僧 行基がこの地に天台寺というお寺を建てた際、
中央から僧侶が派遣され、彼らが自分たち用の器を作るため、
漆器作りの技術を持ち込んだことが始まりといわれている。
*天台寺は以前、瀬戸内寂聴氏が住職をしていた(現:名誉住職)お寺。
これが浄法寺塗の角椀。
"シンプル"という一言では言い表わし切れない、
力強さと美しさ。
なめらかなフォルムと奥深い輝き。
この日、浄法寺の工房さんでは、
職人さんの独立式典が執り行われており、なんと市長まで登場。
こじつけかもしれないが...
巣立ちの日に訪問できたことに運命を感じた日。
その二.津軽の夜と津軽塗
浄法寺を後にし、いざ弘前へ。
弘前に到着したのは夜。
弘前まで来たんだから、と早速"津軽三味線"のLiveが聴ける店へ。
若手津軽三味線奏者の佐藤晶さんが軽快なトークで場を和ませながら、
生演奏を披露。
あー、青森に来た。
しかも、弘前はさくらまつり期間!
迎えた最終日の朝。
ニュースでは聞いていたが、
弘前の桜はまだ2分咲き程度の状況。
しかも小雨降る天気...
そんななか、
津軽塗の工房さんや展示場をぐるぐるぐる。
より丈夫に、より使いやすく、より美しく、
産み出された漆器たち。
津軽塗は重厚感がある。
漆を塗っては乾かし、そして研ぐ、
という一連の作業を何度も何度も何度も繰り返す。
その"馬鹿丁寧"な製作工程は、
「津軽の馬鹿塗り」と呼ばれるほどだ。
ここまで塗りと磨きを追求するのは津軽塗ならでは。
妥協を許さない、
津軽塗職人のこだわりを感じさせる褒め言葉だ。
その三.全国大会!?
さて、弘前を後にしたものの、
ギリギリまで青森を味わい尽くそうと、
立ち寄ったのが津軽こけし館。
何を隠そう、
全国のこけしファンが足を運ぶ聖地なのだ!
聖地だけに、やはり人だかりが!?
と思いきや、
津軽民謡の全国大会という一大イベント開催中。
貴重な機会と思いながらも、
全国大会を横目に"日本一のジャンボこけし"との対面に感動し、
こけしストラップ自販機ではしゃぎ、大人買い。
そしてこけしの余韻と共に、帰路へ。
後編は漆器が主役の旅になった。
漆器の良さは、
見た目の美しさや割れにくい点はもちろんだが、
時間を掛けて、使い込めば使い込むほど輝きを増し、
"成長する"ことにあると思う。
時の経過と共に愛着が湧いてくる。
そして、
大事に使いたくなる。
"漆器"と一括りにはできないが、
少なくとも今回出逢った漆器たちは南部鉄器同様、
長く付き合える、付き合いたくなる"モノ"だと感じた。