「紙の王様」と呼ばれる越前和紙の里には、
紙漉きの紙祖神「川上御前」をお祀りする、
岡太神社(おかもとじんじゃ)がある。
国の重要文化財にも指定される大変立派なお社である。
福井県嶺北地方は平地が少なく田畑には適さないが、
山からの清冽な水が豊富にあり、
雪に覆われる冬の仕事として古来紙漉きが定着した。
紙の歴史は文化の歴史に重なる。
記録されなければ文化は伝わらない。
遡れば...
文教伝来時の写経や古事記・日本書紀などの国史の編纂、
枕草子や源氏物語といった古来日本文学を支え、
江戸時代は幕府の御用紙となるなど、
まさに古来日本文化を支えてきたのが越前和紙である。
なんといっても越前和紙といえば「紙幣」を忘れてはならない。
品質・丈夫さはさることながら、
「透かし(黒透かし)」技術は越前発祥。
古来多くの紙幣に採用され、現在の日本銀行券にも、
越前和紙の紙漉きと透かしの技術が綿々と生きている。
卯立(うだつ)の工芸館では、
地元の紙漉き職人さんの手漉き実演を間近で見学することができる。
原料の選別、紙漉き、板干し、選り分けと、
すべて人の手による一連の工程を経てできた紙は、鳥の子紙の名の通り、
ほんのり薄卵色の人の手の温もりを感じさせる和紙である。
北陸の旅最後は、再び九谷焼へ。
九谷焼を代表する窯元を数軒訪問する。
その出来栄えの良さに、
大切な人に普段使いしていただけきたい贈り物の心を
十分受け止めてくれるものと深く確信する。
窯元の方々と忠之助商店の思いをお話して、
ありがたいことに共感をいただいた。
あらためて襟を正す。
今回も、
思いをしっかり持って仕事をされている方々と巡り合うことができ、
とても収穫の多い北陸の旅であった。