薄曇りの朝、会津美里町へ向かう。


おっと、ここでも「極上の会津」を発見!


会津本郷は1500年代から続く、東北最古のやきものの町。
マンホールの蓋にもバッチリ描かれている。


全盛期は100軒を超えていた窯元だが、
いまは13軒ほどが昭和のたたずまいが残る街中に点在して陶器・磁器の個性的な作品を生み出している。



江戸中期に作られた登り窯をいまも大切に守る宗像窯。


2011年の東日本大震災で大きな被害を受けたが、
個人・法人からなる登り窯再生プロジェクトにより2013年に復興した。
全長20m、7室からなる巨大な窯は往時の面影を今に伝える。


「おあいなはんしょ(いらっしゃいませ)」の暖簾がかかる粋な入り口、8代目ご当主、ご子息の9代目としばし歓談。
手づから作陶の様子も拝見させていただく。


土も釉薬も、そして作り方ももちろん門外不出。
1958年(昭和33年)ブリュッセル万博でグランプリを受賞した老舗窯元の技術と精神は、
21世紀にもしっかり受け継がれ、新たなフロンティアを開拓している。



碍子(がいし)をご存じだろうか?

電柱や鉄塔でよく見られる電気を絶縁し電線を支える、
なくてはならない器具だが、実は磁器が多く用いられている。
絶縁性はもちろんのこと、野外での耐候性や強度が求められるためである。


古くから磁器を生産していたここ会津本郷では
九州 有田から技術を得て碍子生産を開始し、今に受け継がれている。

さすが工業製品の生産工場、すべての機械が巨大である…。


しかし要所要所に「人の手」が加わるところがクオリティーの高さを堅持する肝。

粘土を作る、形を作り・整える、釉掛けをする、窯詰をする、
焼成する、検査する、すべて熟練の職人による実直な手作業だ。


ご当主自ら巨大な窯に火入れをしていく。これからひと晩かけて焼成するそうだ。


こういうところを見るともう単なる工業製品ではない。愛着ある作品だ。

この窯元では碍子づくりで培った釉薬の知識を生かした美術工芸品、日常の器も製作している。
流れるような釉薬の特徴を存分に生かした味わい深い作品ばかりだ。



同じ磁器でもこちらの窯元はまったく作風が異なる。

会津に降る雪のようなほのかに緑がかったなめらかな白磁に、
緻密に計算されたデザインを施す工房 爽の田崎宏さんだ。


ちょうどマグカップのしのぎを削る工程の真っ最中。
シュッシュッと削る、匠だけが奏でられる小気味のいいサウンドが工房に響く。


工房内には製作途中の作品が整然と並ぶ。
独特の切り立ったエッジと、なめらかでふくよかな丸さが田崎さんの器の特徴。
ろくろで手作りしたとは思えない寸分違わぬ出来栄えに、うーんやっぱりこの人変態だなあ(最大級の賛辞)と感心する。



会津本郷焼最後の訪問は、元タバコ屋さんの建物を改装した店舗兼アトリエへ。


地元で「じゃらんかけ」という
割れた器のかけらを金継ぎしてアクセサリーに仕立てるTESORO.accessoryの渡部未来さん。
古いものは約100年前の陶片だそう。

ピアス、ペンダントヘッド、ネックレス、リング…etc. 
どれも二つと同じものはなく、それぞれ強烈な個性を放っている。


アトリエは所狭しと様々な色、形の陶片が置かれている。


これらを組み合わせ、形を整えて金継ぎを施し、作品にしていく。
割れて捨てられたものに再び命を吹き込む尊い作業だ。


スタッフYが挑戦させていただくも…、まあ予想通りうまくはいかないよね…笑



夕食は会津若松市内の料理屋さんへ。
蔵を改装した粋なお店だ。


何を飲んでも食べてもとても美味しい。


楽しい話も尽きない。
素敵な人たちと素敵な時間。至福の時は過ぎるのが早いね。