鉄瓶(てつびん)とは、主に東北地方に伝わる、鉄の鋳物でできたケトル(やかん)のことです。
東北地方は古来良質の砂鉄が採れ、日本刀や各種鉄器生産が行われてきた土地。
山形鋳物のはじまりは平安時代にさかのぼり、その伝統は今の鉄瓶づくりにも活かされています。
すっきりとして無駄のないフォルムのこの鉄瓶。その形状がナツメの実に似ていることから、「なつめ」の名称が付けられました。
表面は砂を固めて作る鋳型の跡が残る鋳肌(いはだ)仕上げに、漆を焼き付けています。内側にも漆を丁寧に塗って焼き付けてあります。
すべて職人の手作業で、手間を惜しまず作られたホンモノの鉄瓶。
これで沸かしたお湯の口当たりの違いは感動的です。普通の水を沸かしたとは思えないほどまろやかで、うっすら甘味すら感じるお湯になります。
このお湯で日本茶やコーヒー、紅茶を淹れると、後戻りできないほどにおいしくできあがります。
また、鉄分が体に吸収されやすい形でお湯に溶け出しますので、鉄分の補給にも効果的。特に女性の貧血予防に愛用されている方も多くいらっしゃいます。
アルミやステンレス、ホーローのやかんと比べて取り扱いが難しいと思っている方も多いかもしれませんが、実際にはほんの少し注意するだけで大丈夫。大事なのは、使った鉄瓶はしっかり乾燥させること。これだけです。
お湯が沸いたらポットや湯冷ましに移し、余ったお湯はぜんぶ捨てて、鉄瓶の蓋を外しておく。あとは余熱で自動的に乾燥してくれます。
大事に使えば何世代にもわたって使い続けられる逸品。
いい道具を育ててみてはいかがでしょうか。
※お湯を沸かしたら、使い切ってよく乾かしてから収納してください。
※鉄瓶の内側は酸化被膜で覆われています。使用するにしたがって褐色の斑点などが出てきますが、洗ったり手やたわしなどでこすらないでください。お湯が透明であれば問題なくご使用いただけます。
※長期間使用すると内側に白く湯あかが出てくることがありますが、水のミネラル分ですので、洗ったり手やたわしなどでこすらないでください。
※IHコンロでもお使いいただけます。
山形鋳物 長文堂
山形県山形市鋳物町
平安時代の中頃に、山形地方で起こった乱を治めるため、源頼義がこの地方を転戦した。その時、軍と行動をともにした鋳物職人が、山形市内を流れる川の砂と千歳公園あたりの土質が鋳物に最適であることを発見。これらの鋳物職人のうちの何人かがこの地に留まったことが山形鋳物の始まり。
創業58年。代々、独自の鋳造技法によって鉄瓶製作に力を注いでいる。口の鋳型作りにも特徴があり(口の鋳型を鉄瓶に合わせ、一本づつ製作)、湯切れがよく使い易い鉄瓶を作り続けている。